常石造船・常石造船昭島研究所 第5回MODEシンポジウムに登壇 ― バーチャルコミッショニングの研究成果を発表 パネルディスカッションにも参加―
9月30日(水)、東京大学本郷キャンパスにて、東京大学大学院新領域創成科学研究科主催の「海事デジタルエンジニアリング講座 第5回シンポジウム MODE*2026」が開催されました。本シンポジウムには常石造船 設計本部 商品企画部 課長代理の藤井雄規が登壇し、パネルディスカッションには常石造船昭島研究所 取締役 技術統括部 統括部長の木村校優がパネリストとして登壇しました。
*MODE(海事デジタルエンジニアリング講座)とは
海事分野のためのモデルベース開発(MBD)とモデルベース・システムズ・エンジニアリング(MBSE)について研究教育する拠点として2022年10月に設置されました。次世代のサステナブルな海上物流を構築するためのシミュレーション共通基盤の開発に取り組んでおり、常石造船および常石造船昭島研究所も参画しています。
■藤井課長代理がバーチャルコミッショニングの研究成果を発表
講演『機電系バーチャルコミッショニングの一例と今後のシミュレーション基盤構築』では、常石造船藤井課長代理が、船内の機器をバーチャル空間でつないで事前に検証する『バーチャルコミッショニング』の研究成果を紹介しました。
コミッショニングとは、船内の各機器を接続した状態で、船が設計どおりに機能することを確認・調整する工程です。近年は環境対応やデジタル化にともない、二元燃料機関や軸発電機、省エネ機器などが導入され、船内システムはますます複雑化しています。
船舶システムの複雑化に対応するMBD/MBSE活用
藤井課長代理は、BEMAC株式会社、寺崎電気産業株式会社と共同で講演し、造船所の視点から研究成果を発表しました。
藤井は「大型船舶は試作が困難であり、従来は実船でしか確認できなかったシステム全体の挙動を、MBD、MBSEを活用してバーチャル空間で検証できるようになってきている」と説明しました。
特性の異なる発電システムの並列運転を検証
研究事例としては、二元燃料機関や軸発電機など、負荷投入特性の異なる発電システムを組み合わせた並列運転の検証について紹介しました。
従来の設計では、電動機始動時の電流値などを特定時点で確認する計算が中心でした。一方、今回の研究では、発電機や船内負荷を接続したシステム全体をモデル化することで、電圧・電流・周波数などの時間変化を含めた挙動を評価できるようになります。さらに、急激な負荷変動や並列運転中の発電機停止といった、実機での検証が難しいシナリオについてもバーチャル空間で再現・検証できることを示しました。
■常石造船昭島研究所 木村取締役がパネリストとして登壇
パネルディスカッション『東大MODEの成果と役割』では、MBDおよびMBSEの価値や今後の展望について議論が行われました。
常石造船昭島研究所木村取締役は設計現場の視点から、環境規制の強化により、建造時の性能だけでなく、就航後に実際の海域でどれだけ燃費が良く、CO2を抑えられるかが問われるようになっていると説明しました。そのうえで、船型、プロペラや風力推進などの多様な省エネ技術を組み合わせて全体最適を図るには、各技術を個別に扱うのではなく、モデルベースで統合する仕組みが大きな役割を果たすと述べました。
人材育成と業界の協調で、さらなる活用へ
MBD、MBSEの今後の活用に向けては、プロジェクトの成功体験を積み重ねることや、社内で活用をけん引する人材の育成が大切だと述べ、他分野の技術者とも対話しながら開発を進めていくことや、MODEのような場を通じて若手人材の育成を進めていくことへの期待を語りました。
業界の協調については、従来から造船業界には企業の垣根を越えて技術や人、データを持ち寄り、共同で開発を進めてきた文化があると紹介しました。そのうえで、MBDの骨格や共通プラットフォームなどの基盤部分を協調して開発していくことが望ましいとの考えを示しました。
常石造船および常石造船昭島研究所は、MODEが取り組む海事分野における脱炭素化・自動化に向けた研究開発・社会実装および人材育成の拠点形成に協力し、次世代燃料船やデジタル技術を用いた高性能次世代船舶の研究・開発などを通じ、サステナブルな海上物流の実現に貢献してまいります。